キャッシュにある違法ファイルを取り出すと違法になる?

Q:違法ファイルであってもネットで見るだけなら合法ですよね?
それなら見た後にキャッシュフォルダからデータを取り出せばいいんじゃない?

A:基本的には違法と考えられます。

このようなケースは文化庁見解では違法となるようです。

ただし,こういったキャッシュをキャッシュフォルダ(記憶装置上でキャッシュが作成・格納される領域)から取り出して別のソフトウェアにより視聴したり,別の記録媒体に保存したりするような場合については,この例外規定は適用されず,著作権が及ぶものと考えられます。(第49条)


文化庁 | 平成21年通常国会 著作権法改正等について
(問10)

「この例外規定」とは著作権法47条の8「電子計算機における著作物の利用に伴う複製」のことです。
(Youtubeで違法動画を見たら逮捕?を参照)

つまりYoutube等の動画サイトにある違法動画を視聴するだけであれば合法ですが、キャッシュフォルダから移動させるなど実質的にダウンロードと同じ状態にするのは違法ということになります。

実際にバレることはまずないが…

キャッシュからデータを取り出すのが違法だとしても、個人のパソコン内で行われたファイル操作(コピーや移動)は外部からわかるはずもなく、結局バレることはまずないでしょう。
しかし実質的に通常のダウンロードと何ら変わりませんから、推奨できる行為ではありません。

厳密に法解釈すれば違法ではないかも

文化庁見解は常識に照らし合わせて考えても、実質的に違法動画をダウンロードするのと同じですから正しいです。

しかし著作権法に書かれていることのみで厳密に解釈すれば違法ではない可能性もあります。

違法データがキャッシュに保存されるまでは上記著作権法47条の8により合法ですが、そこからデータを取り出す行為は私的複製になるとの考え方です。
私的複製は、複製の元となる媒体やデータが何であるかは問題にはせず、ただ「自分が使用するために複製するのは合法」となっています。

しかしどのような複製でも認められているわけではなく、例外として「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器」「技術的保護手段を回避」「違法ダウンロード」の3つによる複製は私的目的でも認められません。

結局違法ダウンロードに該当するので違法ではないか…となりそうですが、著作権法には違法ダウンロードの定義は以下ように書かれています。

著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合
(著作権法第30条1項3号)

キャッシュからデータを取り出す行為は「自動公衆送信」、つまりサーバなどからデータを受信して行う複製ではなく自分のパソコン内で行われる複製ですので、これには該当しません。

つまりキャッシュからのコピーは私的複製が適用され合法になる、との解釈が成り立ちます。

ただしこれはあくまで法解釈のひとつですので、司法判断(裁判)によっては「違法アップロードされた動画を実質的に保存する行為は違法ダウンロードになる」との判決が出る可能性は十分にあります。
それにいくら「キャッシュからコピーしたから違法じゃない」などと言い訳しても、普通にダウンロードした場合と何ら変わりはなく、キャッシュからの移動を証明することは不可能です。

不利になるのは間違いないので、違法アップロードであるとわかっているのなら保存はしないほうが良いです。